物流会社の挑戦!vol.3 〜DX導入効果編〜
提供:合同会社KITSライン
デジタル技術を活用してより良いビジネスのやり方や仕事のやり方に変えていく「DX(デジタルトランスフォーメーション)」。 物流業界のDXに迫るこの連載もいよいよ最終回! DXの計画〜途中経過とお伝えしてきましたが、計画していたDXがほぼ完了した今、現場はどのように変わったのでしょうか?また、DXの計画段階から共に歩んできたという、"DXコンサルタント"の存在も明らかに......! DX完了までのストーリー、そしてDXによる効果についてお話を伺ってきました!
DXの立役者!?DXコンサルタントの存在
三度目の訪問となる物流会社の「合同会社KITSライン」。
昨年、佐賀県の「DXフラッグシップモデル創出事業」に採択され、およそ半年間の中で様々なDXに取り組まれてきました。
- EDITORS SAGA編集部 牛島
前田部長、計画されていたDXが完了されたそうですね!前回は庫内作業での「ボイスピッキングシステム」などの導入、そして管理部門では、RPAによるデータの自動作成などのお話を聞かせていただきました。あれからさらにDXが進んだ点や、現場がどんな風に変化したのか教えてください!
- 前田本部長
はい!今日は弊社のDXにあたり、計画から導入まで共に取り組み、導いてくれたコンサルタントの高橋さんという方もオンラインでつないでいますので、ぜひ一緒にお話しさせてください。
- 牛島
高橋さん、はじめまして!今日はよろしくお願いします。
まずは前田部長、高橋さんにコンサルタントを依頼された経緯について教えて下さい。
- 前田本部長
高橋さんは普段東京でお仕事をされているのですが、ITの知識だけでなく、物流業界にも精通されているため、今回のDXを進めるにあたって弊社の業務内容や状況をよく分かってもらえると思いお願いしました。すぐにはOKがもらえませんでしたが、3回目のアタックでやっとコンサルタントを受けてもらえて(笑)。おかげでなんとか計画書をまとめることができました。
- 牛島
そうだったんですね!高橋さん、差し支えなければ最初お断りされていた理由って......?
- 高橋さん
どこをどうしたいのか、計画が漠然としていてよく分からなかったからですかね(笑)。しかし、前田さんの熱意に負けてKITSラインを訪れ、現場を見せてもらうと、色々とDXで業務改善できそうだと道筋が見えてきました。応募されようとしていた佐賀県の「DXフラッグシップモデル創出事業」では、採択されるのは一社だけという難しい挑戦ということもあり、「よし、一緒に挑んでみよう!」と火がついた感じでしたね。
- 前田本部長
「ここをこう改善したい」という課題に対し、高橋さんは「こういうシステムを使えば解決できるんじゃないか」と、弊社に合ったやり方やツールを教えてくれる頼もしい存在です。導入のフェーズに進んでからは、高橋さんには月に2週間ほど弊社に滞在してもらい、一緒にDXを進めてもらっています。
- 牛島
ということは、高橋さんは月の半分は佐賀に来られているんですね。
- 高橋さん
そうですね。月に2回、1回の訪問につき1週間ほど滞在しています。新しいデバイスを導入する時は、スタッフに使い方のレクチャーや、新しい業務フローの説明なども行っています。
- 前田本部長
社員の一人といっても過言ではないほどです(笑)。高橋さんは現場の雰囲気や実際の業務の進め方なども把握してくれているので、弊社のスタイルに合ったやり方を一緒に考えてくれたり、ベンダー(IT製品を扱う販売業者)を紹介してくれたりもします。
「コストはかけず、ムダを省く」をテーマにしたDXとその効果
- 牛島
コンサルタントの高橋さんと二人三脚で進めて来られたんですね。DXにあたり意識された点などはありますか?
- 高橋さん
あまりコストがかからない仕組みにすることを意識しました。正直、コストをかければいくらでも便利にできますが、導入後はランニングコストが発生し続けていきます。メインとなる倉庫システムなどにはどうしても高いコストがかかってくるので、それ以外の細かい部分は低コストで簡素化する方針を取りました。例えばMicrosoftのサービスの中から、必要なものだけをサブスクリプションで導入しています。
身近なものからDX。利便性を体感させスムーズな導入を実現
- 前田本部長
今回のDXでまず最初に着手したのは燃料管理でしたね。前回も少し話しましたが、以前は給油情報をノートに書き込みしていたんです。それをMicrosoftのFormsで電子化して、タブレットに入力していくように変えました。効率化が目的でしたが、データ化による思わぬ効果もありました。燃料は週ごとに単価が変動するのですが、情報をデータ化したことで燃料費の推移がタイムリーに分かるようになり、安い時期に前倒しでまとめて買い、価格が上がったら買うのを控える、という風に計画的な仕入れができるようになりました。結果として原油高が問題となった昨年12月においても、コストを抑えることができたんですよ。
- 永井センター長
最近はシフトの休日希望の連絡も、燃料管理と同じようにMicrosoftのFormsを使うことにしました。スタッフはスマホでQRコードを読み込んで、簡単に休日希望を出せるようになっています。以前はメールや口頭など各スタッフからバラバラに連絡が入っていましたが、情報を1つに集約することができたので、シフト作成時に情報の取りまとめをする手間が省けました。
- 永井センター長
また、タイムカードで管理していた出退勤記録も、タブレットを活用することで手入力による集計作業がなくなりました。
- 牛島
やり方を変えたことでスタッフから戸惑いの声などはなかったですか?
- 前田本部長
勤怠関係については、先に導入していた燃料管理のタブレット化でみんな使い方に慣れていたので、割とあっさりと受け入れてくれた感じでしたね。使い方も難しくはないので。
- 高橋さん
DXは「意識改革」が重要になってくるため、手っ取り早くスタッフみんなが触れるものからDXをやっていくように計画したんです。スタッフにとって身近なものから取り入れ、利便性や生産性の向上を体感してもらうことで、DXに対してなるべく苦手意識が生まれないよう心掛けました。
システムの連携で重複する作業をカット
- 前田本部長
さらに、受注から発送までの流れをワンストップで完結できるようなシステムを構築しました。弊社には毎日受注FAXが100〜200枚届くのですが、例えば受注が200件あった場合、商品の出荷を管理する在庫管理システムに200件分入力し、宅配伝票を発行する別のシステムにも200件分の入力をしなければなりません。そして発行した宅配伝票を持って倉庫へ行き、出荷する商品と伝票を結びつけるという流れだったんです。この重複する入力作業を1回で済むようにしました。
- 高橋さん
今回、受注内容を入力するアプリケーションを構築して、在庫管理システムと宅配伝票を発行するシステムを連携させました。これにより、一度の受注入力で出荷データの作成と宅配伝票の発行まで完了します。入力項目も最小限になるように工夫したり、Microsoft365のデスクトップ向けPower Automateを使用し、データ入出力の繰り返し作業をRPA化し、1分1秒でもムダを省けるようにしました。
- 永井センター長
今までは出荷する商品を倉庫でピックアップする順番と、出力した配送伝票の順番が一致していなかったので、伝票を出荷順に並び替える作業も発生していましたが、今回のシステム連携によって商品と伝票が同じ順番に出るようになり、並び替えの手間もなくなりました。受注入力から発送まで毎日およそ4時間かかっていた作業時間が、半分に削減されました。
DXで進む業務改革。現場スタッフの変化について
- 牛島
DXによってどんどん業務の省力化、効率化が進んでますね!ここまで様々なDXに取り組まれて来たわけですが、DXしてよかった点と大変だった点、それぞれ教えてください。
- 前田本部長
よかった点としては、生産性が向上したことです。例えば紙ベースだった部分をデータ化したことにより、事務作業の負担が減りましたし、複数人でタスクを分散できるようになりました。業務のマニュアル化、標準化により属人化から脱却することができましたし、ボイスピッキングシステムの導入により、外国人実習生がより活躍できる環境になりました。これらにより生産性が向上し、これまで業務容量に対応できずお断りせざるを得なかった新規の仕事を受け入れられるようになりました。
- 永井センター長
また、システムのクラウド化によって、当日の入庫・在庫状況をお客様へ自動配信できるようになり、これまで2時間かけてメールで通達していた作業が10分で済むようになりました。クラウド化で利便性が上がったことで、弊社に興味を示してくれるお客様も増えてきています。
- 前田本部長
大変だった点としては、先ほど話したように、燃料管理や勤怠など手軽なものはすんなりと受け入れてくれましたが、正直なところ内容によっては、DXで業務のやり方が変わることに難色を示すスタッフもいました。導入したデバイスの使い方や、新しいフローに慣れるまでの期間に、個人差があるのも現状です。
- 永井センター長
システムやデバイスを使った方が効率的ですが、これまでのやり方で慣れている人は従来の方がやりやすいと感じるのでしょう。現場を見ていると、過去のやり方に戻して作業をしている人もいました。
- 牛島
そういう場面にはどのように対処されたのですか?
- 前田本部長
コミュニケーションをとって、DXの重要性や目的を丁寧に説明しましたね。最初は慣れるまで大変に感じるかもしれないけど、業務が楽になることを体感してもらえば大丈夫だと思っていましたので。それでも難しい場合は思い切って配置替えもしました。まだスタッフによってシステムの理解度にバラつきがあるので、教育の部分は継続して取り組みたいと思います。
- 牛島
なるほど。DXによって、スタッフの方の仕事に対する意識やマインドには変化を感じますか?
- 永井センター長
そうですね、これまで手作業でやっていた部分に対して、「ここもITを活用できないか?」「ここはこうすれば改善できるのでは?」と現場から自発的な意見がでるようになりました。
- 前田本部長
DXで業務の軽減や時間の短縮を体感したことで、私も含めスタッフも視点や考え方が変わったと感じますね。DXの視点で業務を見て行くと次々と改善ポイントが見つかります。これからもブラッシュアップを重ねて生産性を上げていくことで、新しい仕事を増やしていきたいですね。
今回は倉庫部門と業務部門の取り組みが主でしたが、これからは管理部門、配送部門にも取り組んでいく予定です。今後20年先を見据えて、さらなるDXを進めていきたいと思います。
これからDXに取り組む事業者へメッセージ
- 牛島
これまで3回にわたりお話を聞かせていただき、ありがとうございました!同じ物流業界にもDXに取り組みたいと考えている方も多いと思います。そうした事業者の方へ向けてメッセージやアドバイスをお願いできますか?
- 前田本部長
今回DXに取り組んでみて、まずやってみることの大事さを実感しました。DXと聞くとITやデジタルのことでなんだか敷居が高そうに感じるかもしれません。しかし今回、やってみたら意外と簡単にできたということがたくさんありました。
DXに取り組むにあたっては、どんな場面でもコストがかかるツールが必要となるわけではありません。サブスクリプションや無料のツールなどを活用することができれば、大きな投資をすることなく身近なところから効率化、省力化を進めることができます。当社ではそうした取り組みの積み重ねが生産性の向上と、従業員の意識改革につながりました。同じような悩みを抱えていらっしゃる方はぜひ一歩を踏み出してみてください。
まとめ
物流業界×ITによる今回のDX。
DXは業務の一部分だけを変えるものではなく、企業風土、文化など会社全体を大きく変換していくことが重要。会社の幹部である前田部長が率先してDXにコミットされたことも、DXが成功した大きな要因ではないでしょうか。
ひとくちにDXといっても、企業の業種や形態などにより、様々なやり方、アプローチがあります。今回紹介した事例を参考に、自分たちではどのような方法が可能なのか、検討してみてはいかがでしょうか。
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