
不動産会社が新たにチャレンジするアプリ開発
提供:株式会社ソロン
佐賀県と久留米市で不動産売買専門店を経営し、売買仲介・買取再販事業を展開している株式会社ソロン。kintoneを使い倒した自社の業務改善で得た知見を不動産業界全体の課題解決のために生かすべく、新規事業としてシンプルで身近な不動産アプリ開発を内製化し日々チャレンジを重ねています。今回は新規事業を主導する平川社長と、アプリ開発の最前線にいるDX事業部 橋本さん、鎗水さんにお話を伺います。
不動産会社がアプリ開発?
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前田/SISC
これまで2度ソロンさんには事例コラムのインタビューでお世話になったと思いますが、1年前の前回コラムでは「kintoneを使い倒している自社の経験を生かした、DXコンサル支援の別会社をつくりたい」と仰ってましたよね。進捗はいかがでしょうか?
・2023年4月19日公開)新たなビジネスに向けて進化する企業の挑戦!
・2024年3月21日公開)Kintoneを使い倒して業務改善 ~新たなビジネスに向けて始動~
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平川社長/㈱ソロン
あれから結構変わりましたね。kintoneのツールに関してコンサルするというより、DX推進部の2人がアプリを新しく開発して、そのアプリを販売するような事業を始めようと思っています。最終的には、自社開発したアプリをkintoneとも連携させてデータとして格納されていくようなイメージでしょうか。
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前田/SISC
自社でアプリ開発・販売にチャレンジされているという、まさしく「IT業的な事業」ということですね。
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平川社長/㈱ソロン
そうですね。とりわけ"シンプルで身近な不動産業界向け"のアプリ開発・販売をしようと思っています。ぼくらは実際に自社が不動産業務をやるなかで困っていることをアプリ化しようかなと。
日本全国、不動産会社は大体同じ業務をやっています。でも不動産業務に対応したシンプルなアプリがないんですよ。だからもう自分たちで作って、それを不動産業界の他社にも販売しようと考えてるわけです。
着想から実装のむずかしさ
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前田/SISC
まさしくエンジニアとしてアプリ開発されている橋本さんと鎗水さんがお感じになっている大変な点などはありますか?
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橋本さん/㈱ソロン
一応、いま私たちが扱っているのはノーコードでできる開発ツールです。自社でkintoneを使っている経験もあり、開発自体はさほど大変ではないんですが、難しいのは「情報連携」の部分ですね。
現場社員の話を聴きながら「こんな感じのフレームで進められるかなぁ」と思って大枠つくって設定してみて、実際にじゃあ動かしてみようってなると、「あれ、そういえばここのこれは必要なのかなぁ」とか後から次々に疑問が出てきてしまうんです。
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前田/SISC
確かにそうですよね。不動産業務に直接携わってない立場だからこそ、「ここはどうなんですか?」っていう気づきがあるんだと思います。中に入っちゃうと見えづらいところありますよね。
鎗水さんはいかがでしょうか?
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鎗水さん/㈱ソロン
やっぱり現場から聴いたことを形にするっていうのがすごく難しくて...。ノーコードゆえに取っ掛かりは簡単な一方で、細かいところまで突き詰めると、データをどこに保存させるかとか、情報をどのように紐づけるとか...。思うような形に実現させるのがとても難しいです。
不動産業界向けのアプリとは?
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前田/SISC
では、現在開発中のアプリについて教えてもらえますか?
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橋本さん/㈱ソロン
わたしが開発しているのは「業者さんとの業務連携アプリ」です。今は業者さんとの業務依頼のやり取りをChatworkでやってるんですけど、情報がみづらく流れて行ってしまうので...。営業担当者の案件別に業務フローを整理しつつ、ワークフローとしての機能も持たせています。
営業担当者の案件別に業務フローを整理しつつ、ワークフローとしての機能も持たせています。
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平川社長/㈱ソロン
「業者さんとの業務連携アプリ」はkintoneで作成しましたが、営業担当者から使いにくいと言われ、業者さん側でもkintoneのアカウント取得と費用がかかるので断念しました。
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前田/SISC
鎗水さんが開発されているアプリはどんなものでしょうか?
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鎗水さん/㈱ソロン
「物件の役所調査」に関連するものです。これは、不動産売買をする際に契約後のトラブルを避けるため・不動産物件を公正に取引するには重要な業務で、必ず調査しなければなりません。不動産の立地や建築などに関連する法律や道路・インフラの状況について、調査します。
いまは各物件ごとに紙のシートを持ち出して記入しています。

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平川社長/㈱ソロン
将来的には、「物件調査の情報にさほど詳しくないスタッフでも携帯電話を使いながら調査を進めて、入力された情報が社内kintoneと連携され、最終的には重要事項説明書の記載事項として自動で入力されており、売買契約の際に責任者である宅建士が重要事項説明書の内容確認と署名をするだけ」という風にしたいと考えています。
地域貢献とやりがい
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前田/SISC
過去の取材でも、ソロンさんからは「自社の経験を地域貢献に活かしたい」という想いを強く感じましたが、今回の新規事業であるアプリ開発と地域貢献はどのように結びつくのでしょうか?
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平川社長/㈱ソロン
長野県にある諏訪・八ヶ岳地域の情報をまとめたアプリで「やつリンク」というものがあるんですが、これの佐賀県版(市町村ごとのアプリ)を作りたいなと考えています。
スマート化センターさんもそうですし、商工団体さんの情報、行政さんの空き家対策、まちづくりのメンバーや企業、個人店舗、各種団体、まちのイベントなど情報のジャンルの垣根を越えて発信したいですね。
・やつリンク について
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平川社長/㈱ソロン
同じ地域・環境・人々を元気にするためのアプリを作って無料配信する。いわゆる地域投資ですよね。
金銭的リターンはないし、誰もこんなアプリ作ろうと思わないだろうけど、僕らは自分たちで作れるから地域のためにチャレンジしたいと思います。
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前田/SISC
橋本さんと鎗水さんはアプリ開発をなさっていて、やりがいや喜びを感じる場面はどんなときでしょうか?
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橋本さん/㈱ソロン
業務手続きによっては、Chatworkが見づらい場面もあるという現場社員からの意見が多かったんです。なので、実際に今回アプリを新しく作っていく過程で、現場社員に業務フローを聴きながら進めてみたところ、手前味噌ですが自分が作ってみたアプリのほうがうちの業務上では見やすいと思えるものができたときはすごくうれしいですね。
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前田/SISC
鎗水さんは入社するタイミングからDXを推進するポジションに就いていらっしゃいますが、働き方などいかがでしょうか?
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鎗水さん/㈱ソロン
もともとぼくが、みんなでワイワイというよりは、1人で集中してがっつりやりたいタイプだったので働き方に関して特に不安や不満はないですね。
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前田/SISC
実際アプリをつくっていて楽しいなって思うことのほうが多いですか?
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鎗水さん/㈱ソロン
いや、つらいときもあることは否定できません。ただ、社長や現場社員からこうやってほしいって言われた内容をコードで組んでみて、実装して、現場業務で使ってもらえた時はとてもうれしいです。
時間かけて悩んだぶん、作ったアプリに対して愛着じゃないですけど、これだけやったんだからっていう想いもあるんだと思います。
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平川社長/㈱ソロン
確かに作った本人からすると、たくさんのひとから使ってもらえると嬉しいよね。この2人は本当に優秀なんですよ。
「データ活用カンパニープロジェクト」に参加してみて
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前田/SISC
ソロンさんは、平川社長と橋本さん・鎗水さん、そして本部長さんに当センターが実施した「データ活用カンパニープロジェクト」にご参加いただいたんですよね。
この研修が実務に活かされたことはありますか?
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平川社長/㈱ソロン
ぼくがこの研修から学んだことは「別視点からのデータ分析方法」と「褒めること」ですね。
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前田/SISC
確かに今日のインタビュー中も、社長がお二人をすごく褒めていらっしゃる様子が印象的だなあと感じてたんです!
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橋本さん/㈱ソロン
通常は経営層の皆さんが受講されるような研修なので、経営者視点の内容も多かったんです。
でも同時に、私たちのような事業開発向けの話も多く、実際に「あー、確かにそういうことあったなぁ」っていうようなあるあるみたいなことを具体的に話していただけたので、すごくわかりやすかったです。
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鎗水さん/㈱ソロン
私は本当に前提の知識がない状態で受講して、率直にすごく内容が濃いなと感じました。
先ほど橋本も言っていた”過去のあるある”から、そういえばこんなことあったなっていう事例をわかりやすく伝えてもらえるので私も理解できました。それこそ最初に要件定義ができていなかったから後々トラブルが発生したとか...。
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平川社長/㈱ソロン
あとは目的のこともよく言われてたよね。
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鎗水さん/㈱ソロン
そうですね。目的を最初の時点で明確にしておかないと頓挫するし、失敗するし、遠回りはする。それから仮説検証がポイントでした。
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平川社長/㈱ソロン
それから、一番最後にみせてもらったロードマップがあってよかったよね。

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平川社長/㈱ソロン
研修の最終回に講師の先生にこのロードマップをみせてもらったんですけど、実は全13回の研修内容もずっとこれに則って進んでたんですよ。
もちろん、研修内容も資料もすべてうちの会社のためのオーダーメイドです。色々な面で講師に大変感謝しています。
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前田/SISC
これは確かに自分たちの現状の立ち位置とか、これからここに向かって進んでいったらいいっていうのがわかりますね。
研修前と研修後で何か変化はありましたか?
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橋本さん/㈱ソロン
社長や現場社員から業務依頼として「こういうアプリ作ってよ」って言われたときに、とりあえずそのまま受け入れるんじゃなくて、「このアプリをつくることで業務がどのようになればいいのか」という目的を設計段階から確認して進めるようになりました。
「こんな感じで作ってみました」と自分だけの憶測で作り進めた後で、社長や現場社員から「こういう内容じゃないんだけどね...」となってしまうんです。
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平川社長/㈱ソロン
これは、現場の不動産業務のことをアプリ開発してくれている2人に伝えきれていないぼくの課題でもあるんですけどね。
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橋本さん/㈱ソロン
とはいえ、こうしたミスコミュニケーションを防ぐためにも、何が目的でこのアプリを作るのかという点を意識してアプリ開発の依頼を受けることですね。いざ内容を確認してみると、「この目的なら、こっちの内容で構成したほうがいいかもしれませんよ」といった事前の意見のすり合わせができます。ある意味では業務効率化にもつながったように感じます。
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前田/SISC
鎗水さんはいかがですか?
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鎗水さん/㈱ソロン
私の場合は新卒入社2年目という立場もあってか、「頼まれたら、とりあえずやらなきゃいけない」という感覚が普通だったんです。でもこの研修を受けてからは、やはりまず目的を明確にして何のためにこの業務をやらなければならないのかというような要件定義をしっかりするように意識しています。
そうすることで、以前のようにとりあえず闇雲にやってみるより開発がスムーズに進んだり、後々のトラブルが起こりにくくなったりしています。結果的に、自分の時間も相手の時間も無駄にならないようになりました。
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前田/SISC
平川社長はいかがですか?
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平川社長/㈱ソロン
まずこの研修自体は、「DXにおけるスタートアップ」というのが元々の目的だったんですね。だから新規事業やるのは私だったから、研修受けるのも自分1人だけでいいかなと思ってたんですけど、スマート化センターの皆さんが「社長1人だけじゃなくて、これから一緒に新規事業やっていくメンバーもぜひ参加してください!」という話をもらったんです。
だから橋本と鎗水に関しては、どういう風にして事業というものが仕上がっていくのかということを理解しておいてもらって、いまぼくの頭の中にある「アプリを自社開発していく」とか「DXの会社作る」っていう新規事業構想の共通認識につなげてほしかったんです。
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平川社長/㈱ソロン
それで研修を受けて一番思ったのは、「社員たちのスキルや考え」がみえるんですよね。
研修中のふとしたコメントで、「橋本はこういう風に考えてたんだ」とか「鎗水はこんなことまで知ってるんだ、俺も知らないのに。」とかね。
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前田/SISC
平川社長ご自身の社員さんに対する気づきにもなったわけですね。
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平川社長/㈱ソロン
そうですね。例えば、鎗水はこれだけ知っててスキルもあるんだったらいつまでも新入社員扱いしないほうがいいのかもなとか。
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鎗水さん/㈱ソロン
いや、まだまだ新入社員ですよ(笑)
それぞれが抱く夢や将来像
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前田/SISC
これだけ熱意をもって業務に取り組まれている皆さんですが、それぞれが思い描いている夢や将来像、あるいはこういう未来になったらいいなというイメージはありますか?
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平川社長/㈱ソロン
ぼくは「アプリ界のドン・キホーテ」ですね。「驚安の殿堂」でおなじみの。
これは会社が掲げるビジョン達成も意味しています。「住まいに関するすべての「こまった」を「よかった」へ。社会の『こまった』を『よかった』へ 変えられる企業・個人になる。」
これを実現するためにアプリを作って使ってるだけなので。よいものを安く広く提供したいですね。
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平川社長/㈱ソロン
だからアプリを作って、それを使ったみんなが幸せになればいいのかなと。
大手企業ができないことでも、うちの会社ならできる。無くてもあまり困らないアプリかもしれないけど、でもあったら便利だよねと言ってもらえるようなものを作っていきたいと思います。
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前田/SISC
橋本さんはいかがですか?
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橋本さん/㈱ソロン
そうですね、先日とあるアプリの開発者ツールをみてたんですけど、正直わからないことが多いと感じてしまいました。
コード編集はしっかり1から開発目線で勉強しなければなと。
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前田/SISC
素晴らしいですね。もともとアプリ開発の経験もなかったなか、実際に開発の最前線にいることで、さらに向学心が芽生えていらっしゃるんですね。これができるようになったから、じゃあ次はあれも..みたいにいろんな好奇心が連鎖して生まれるんでしょうね。
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橋本さん/㈱ソロン
うちの社長は自らいろんなものを調べて「これいいんじゃないの」って社員に提案してくれるので、それで実際にまた新しく導入するとなればその準備も...
求められたときに応えられる人材でありたいなと思います。
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前田/SISC
鎗水さんはいかがですか?
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鎗水さん/㈱ソロン
直近の目標としては「もっと開発スピードを速めること」です。
開発スピードを速めれば結果としての数が出せて、それだけ売上や利益にもつながりますし、結果的に私自身の給料も増えますし...。
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前田/SISC
ただ与えられた目の前の業務をやるだけじゃなくて、インセンティブや社内におけるご自身の役割を意識されているのもすごくいいですよね。
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鎗水さん/㈱ソロン
中長期的なところでいえば、私はまだまだ社歴が浅いというのもあってか、誰かからの指示を待つことのほうが多いんですね。だからもう少し自分から能動的に動いていけるようになりたいです。
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前田/SISC
これからアプリ開発がますます進み、不動産業界に新しい風を吹かせる存在になりそうですね。またぜひお話聞かせてください。
本日はありがとうございました!