事例紹介

ひとり事業者の持つ悩みをデジタル化と伴走支援で解決

提供:イマリ・ホットエアタービン

「イマリ・ホットエアタービン」の山田さんは、バイオマス(生物資源)からグリーン電力を生み出すバイオマス発電機を個人で開発・製造販売しています。ひとり事業者だからこその悩みを、デジタル化で解消しようとアクセラレータ事業に参加しました。

山田 義人さん

ひとり事業者だからこそ業務効率化にこだわってデジタル化を推進

ーーはじめに業務内容を教えてください。

バーナーやバイオマス発電機の開発・設計を手掛けています。以前、汚泥の焼却炉を製造する企業に勤めていたのですが、廃棄物を燃やすだけでかなりのエネルギーが発生していることを知りました。ただ放出されているこの熱エネルギーをもったいなく感じて、何かに活用できないかと自分にできることから挑戦してみることにし、1年ほどかけて自費でバイオマスバーナーを作って特許を取得しました。その後、別の業務に就くなかで「これからは電気の時代だ!」という思いが強くなっていき、60歳になったのを機にバイオマス発電機の開発・設計を主業務に独立しました。

ーーどのような点でDXの必要性を感じられたのですか。

ひとりで運営する個人事業なので、主業務である開発・設計はもちろん、バックオフィス業務まですべて自分でこなさなければなりません。しかし、バイオマスバーナーの開発機を試運転している間は、エラーが出ていないかなどを確認するために付きっ切りで監視する必要があります。それでは業務効率が悪いですよね。これを解決するのに、IoTはぴったりなのです。例えばオイルユニットの圧力が下がったらメールでアラートが届くように設定しておくと、監視やデータ収集はデジタルに任せて、私は別の作業や事業の構想に時間を割くことができます。ひとり事業を効率的に進めるため、積極的にIoT機器の活用に取り組んできました。
そのような背景があり、これまでも佐賀県産業イノベーションセンターに相談したり、伊万里市の補助を受けたりしてきました。特に、伊万里市中小企業DX支援事業費補助金で「スマートIoT導入によるバイオマス発電機開発業務の効率化」に取り組み始めていたこともあり、さらなる業務効率化に向けて今回のDXアクセラレータ事業に参加した次第です。

「分かっているつもり」だったビジネスフローを改めて整理

ーーこれまでの取り組み内容を教えてください。

まず初めに着手したのは、書類管理の改善です。それまでは、資料は紙かUSBメモリにデータを保存して持ち歩き、パソコンでの管理と併せて、バックアップとして外付けハードディスクを使っていました。重複して保存しているデータもあり、1人で管理しているにも関わらずどこに何があるか分からなくなることもあったんです。今回Googleより頻度は少なく済みそうです。クラウドで仕事のデータが管理できるようになり、安心かつ便利であることを身に染みて感じています。もう少し早くやれば良かったというのが正直な感想ですね。
また、アクセラレータ事業者には業務デジタル化のサポートみならず、営業活動に関する支援もしていただきました。私自身が開発、エンジニアリング、知的財産権業務に集中するため、製造・販売は外部委託します。その際、パンフレットやポスターを作成して展示会などで協力会社を募ることを提案してくれたのです。ほかにも、技術マッチングサイトへ登録することもご提案いただき、営業のアウトソーシング化に向けて準備を進めることができました。
そして特に大きな影響を受けたのが、ビジネスモデルの可視化です。事業の目的、製品の特長、販売方法……自分で作ったものですから、すべて分かっているつもりでした。しかしDXアクセラレータ事業者のコンサルティングを受けながらビジネスモデルを見つめ直したことで、あいまいな部分もあることに気付き、改めて考えを整理できました。今後は商談の場面でも理路整然と説明できそうです。これはひとりではできなかったことですね。自分の中にある考えやアイデアを整理するのにとても有効だと感じています。
ほかにも、外国語の論文・カタログ・動画等をChatGPTで翻訳する方法も教わってかなり効率的になりましたし、私の技術をステップアップさせることにも繋がりました。

ーー本事業に参加して、良かった点を教えてください。

いくら世間で評判の良いサービスがあっても、導入に踏み切るにはきっかけや、やり切る覚悟が必要です。今回のアクセラレータ事業では、その点で大きく後押ししてもらったと感じています。
また、アクセラレータ事業者の視点から多面的に助言してもらえたことで、ひとりでは気付けない部分にも目を向けるきっかけになりました 。これはひとり事業者ならではの悩みですが、なにかアイデアがあっても相談したり、話し合うということがないのです。他者の視点があって発展するアイデアもありますので、非常に有難かったですね。

夢はエネルギーを核とした地域活性化。目標に向けて業務効率化を進める

ーー最後に、今後の展望をお聞かせください。

将来的には、「エネルギーを核とした地域活性化」を目指したいと考えています。実は以前、愛知県豊田市の山間部にある診療所が、高齢者の通院をはじめ日常生活を支援するプロジェクトの運営資金を捻出するために、電力会社を設立したというエピソードを耳にしました。これまで漠然と「地域活性化」を考えてきましたが、その事例を聞いて「私がやりたいのはこれだ!」としっくりきたんです。同時に、事業の核となる発電技術を応用して、燃やせるものさえあれば発電・蓄電できるものを作りたいと考えています。そうすれば、日本全国でいつ起こるか分からない災害に備えることができますからね。
これらの構想を組み合わせて、私がバイオマスで電気を発電し、行政や企業を巻き込んで、コミュニティバスの利便性向上や防災・減災に向けた備え……そのような地域課題を解決できないかと思っています。太陽光発電は地域で取り組まれているケースもありますが、安定供給が難しい。不足分をバイオマスで発電して、安定した電力供給を実現することで地域へ貢献したいです。
そう遠くない未来にこれら目標を実現するためにも、デジタル化をさらに進めて開発に集中できる環境を整えていきたいですね。


(会社概要)
会社名:イマリ・ホットエアタービン
住所:伊万里市大川内町乙136-4
業務内容:バイオマスバーナーの製造・販売、バイオマス発電機の開発

R5年度アクセラレータ事業受託会社:ロボフィス株式会社

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