陶磁器メーカーのチャレンジ!課題の数値化から始まるDX
提供:株式会社香蘭社
佐賀県では、県内企業に対するDXの取り組みの一環として、 DXアクセラレータとして伴走することで、経営課題の整理やその解決への取組の企画立案を支援しており、 最終的には、企業自らが自走して DX を進めることができるようになることを目指しています。 今回は、DX アクセラレータが香蘭社と行ってきた取り組みについて、 香蘭社専務の浦山様、管理本部長の樋口様、有田工場工場長の森様にインタビューしました。
DXを進める理由について
- DX アクセラレータ
まず、御社の歴史についてお聞かせいただけますか。
- 浦山専務
約400 年前に佐賀県有田泉山で白磁鉱が発見され、初代深川栄左衛門が陶磁器製造を始めたところから歴史が始まりました。その後、明治12 年に第8 代深川栄左衛門が香蘭社を設立しました。その功績は大きく、陶山(すえやま)神社には彼の功績を記した「深川君之碑」が建てられました。
- DX アクセラレータ
非常に長い歴史をお持ちなのですね。
続いて、御社の概要について教えてください。
- 浦山専務
美術品事業、碍子事業、ファインセラミック事業が事業の3 本柱です。全体の売上高は21億円で、230 名の従業員を抱えております。美術品事業とは、いわゆる食器・インテリアの製造販売です。碍子(がいし)事業とは、電線についている白い玉がいしなどの絶縁碍子器具の製造です。ファインセラミック事業とは、半導体製造に必要な部材の製造となります。
佐賀県有田町に本店を置き、東京、大阪、福岡に営業所を有しております。各事業の製品を製造する4 つの工場は有田と岐阜に居を構えています。
- DX アクセラレータ
今回DX伴走支援をご利用されたわけですが、それ以前はなにかDX化への取り組みをされていましたか。
- 浦山専務
勘定系システムのバージョンアップの検討を進めていました。今は営業系システムと連動していないためにデータ連携ができていません。その部分も合わせてどうにか改善できないかと、以前から佐賀県産業スマート化センター様にご相談していました。
- DX アクセラレータ
DX伴走支援のスタート前から、DX化への意識を持って取り組まれていたのですね。
- 浦山専務
はい、その議論の中で今回のDX伴走支援のことを知り、支援を受けることにしました。
- DX アクセラレータ
では、御社の経営に関しての現状認識と課題を教えてください。
- 森工場長
美術品事業の製品は、工業製品というよりどちらかというと工芸品であり、製造過程では変えられない部分もあります。そういった部分まで機械化してしまうと、当社の理念のひとつである「形状および画彩は美にすること」が失われてしまうおそれがあります。
- DX アクセラレータ
なるほど。機械では美を表現することに限界があり、製造の本流部分の効率化には壁がありそうですね。
- 浦山専務
そうです。しかし、それ以外の部分、例えば製造工程の効率化やビジネス系システムとの連携などの改善には取り組む余地が大きいです。現状では、お客様からの問い合わせに、スピード感をもって正確な納期等をお示しすることが難しく、機会損失につながっている側面があります。それを解決するために、2 点、前述した「勘定系システムと営業系システムの連携」、それから「社内紙伝票の削減」の課題解決が有益だと思いました。
- DX アクセラレータ
製造本流ではなく、それをサポートする周辺部分に手を入れて効率化を図るわけですね。
- 浦山専務
そのとおりです。特に営業現場から工場や流通部門などに在庫や納期の問合せをしようとしたとき、各担当に電話で聞いて仕掛品や完成品に貼ってある紙伝票を見ないと正確な数を把握できないことが問題です。これが原因で販売の機会損失が起きているのです。
DX伴走支援の内容について
- DX アクセラレータ
システム連携と紙伝票削減に取り組むにあたって、まず取り組まれたことは何でしょうか?
- 森工場長
はい、まずはアクセラレータと一緒に現状分析に取り組みました 。業務棚卸しですね。その結果から、いろいろな現場の課題が数値を伴って見えてきました。
- DX アクセラレータ
そこから見えてきたことはどんなことでしょうか。
- 森工場長
部署ごとに必要とされる情報が異なるため、紙伝票が各部署内で局所最適化されていて、部署間の情報伝達媒体として役に立っていないことがわかりました。
これを、原料調達から、製造工程、在庫、発注、売上まで一貫して、どこにどういう状態で何が何個あるかという形で見える化できるのが理想です。
- DX アクセラレータ
まずは情報をデジタル化してデータとして役に立つ形にするところから、ということですね。
- 森工場長
そうですね。他にも、現在はお客様からの発注をFAXでいただくことが多いですが、結局データとしては役に立たない状態です。最終的には発注システム全体をIT化できるのが理想ですが、まずはOCRを使ったデジタル化にも取り組めみたいと考えています。
- DX アクセラレータ
今後、いまお聞かせいただいた分野での業務改善を進めていらっしゃる途中ですが、ここまでのプロセスを振り返ってみていかがでしょうか。
- 浦山専務
非常に満足しています。第三者による業務棚卸しによって、社内の問題に関する共通認識の形成 がスムーズになりそうだと感じています。明らかになってきた問題に対応できる新しいシステムの形をご提示いただいていますが、それが刺激になっていて、それだけでも今の業務改善が見えるということもあると思っています。
- DX アクセラレータ
ただ、新しいシステムの導入にあたって、障壁も予想されるのではないでしょうか。
- 浦山専務
全体的にITに明るいわけではないので、導入初期には様々な反発はあるかもしれない、とは思います。しかし、実際に施策を導入して本当の業務効率改善につながることを実感し、成功体験を積めれば、従業員の皆さんからも意見が出てきて更に業務改善も進むのではないか、と期待しています。
会社の将来構想について
- DX アクセラレータ
DX化が進むことで効率化が進むというお話でしたが、他に期待されている側面はありますか。
- 浦山専務
これからはIT化・DX化が進むことで、可能になる新しいビジネスの形態があると思っています。
- DX アクセラレータ
というと、例えばどんなことでしょうか。
- 浦山専務
弊社には少量多品種が求められていますが、品質と納期の両面でそれぞれのお客様にフィットする形で価値を提供していきたいです。たとえば、お客様との打ち合わせの中で、3DCADで設計してイメージを共有し、サンプル品を3Dプリンターで作り、それを確認いただいてから製造に着手する、などが考えられます。
また、美術品の長い歴史と高い評価には自負がありますから、極端に言えば磁器ではないもの、例えばデザインそのものを売っていくということも考えています。モノが動かない形態ですから、IT化・DX化の恩恵が大きいでしょう。
- DX アクセラレータ
これから、御社はどのような方向を目指されていくのでしょうか。
- 浦山専務
弊社はこれまでも時代の移り変わりに合わせて、常に時代にあった製品を提供してまいりました。これまで構築した歴史や実績にあぐらをかかず、常に運用方法を見直していくことで、自社の付加価値を高めていくことを目指しています。
- 浦山専務
弊社は有田町にうまれて334年になりますから、これからも有田町の雇用を生み出し、お取引先様やエンドユーザーの方からも、「香蘭社があってよかったね」と言われるよう、今後も精進していきたいです。
- DX アクセラレータ
DX伴走支援のメンバー も御社の方向性に共感するところは大きいです。今後ともご一緒にプロジェクトを進めてまいりましょう。本日はありがとうございました!
R4年度アクセラレータ事業受託会社:NTTビジネスソリューションズ株式会社