事例紹介

実証試験からビジネス化へ|IoT危険水位到達管理システム

提供:アイシェア株式会社、松栄技建株式会社、エイリツ電子産業株式会社

近年増加している河川の増水などの自然災害。危機管理において、その状況を早急に把握し避難を促すことが最重要と言えるでしょう。松栄技建株式会社は人が行っていた現場の状況確認作業をシステム化し、そのシステムの可能性を災害対策にまで拡げてビジネス化されました。

危険な河川の状況確認作業を水位センサーで

SISC

IoT危険水位到達管理システムを開発するきっかけは何だったのでしょうか?

森さん/松栄技建㈱

土木・建設会社の現場は天気に左右されることがかなり多いです。

今までは現場監督や現場作業員が夜に現場の状況確認に行ったり、徹夜作業になったりといった課題があり、この課題を「IoTツールを使って解決したい」と考えました。

河川の水が危険水位に到達したことがわかる装置はもちろん防災にもつなげられます。県や国によって一級河川には似たような装置が設置されていますが、本流に流れ込む支流の水害がほとんどなのになかなか情報が入ってこない状況です。

河川の増水は人が流される、事故につながることがありますから、そうならないで済むように、人が現場に行かなくても情報を得られる装置をエイリツ電子産業株式会社と協力してつくりました。

特に佐賀は農業県ですし、我々の建設現場のことだけでなく地方自治体などと同時にシステム化しておけば、県や市の担当者、水を管理している人たち全員で情報を共有できます。それってものすごくDXですよね。そういった流れの一環になればと思っています。

IoT危険水位到達管理システム「Iシェア2」
IoT危険水位到達管理システム「Iシェア2」

現場に導入してみて

SISC

現場の方の反応はいかがでしたか?

森さん/松栄技建㈱

人が行かなくても情報が取れるということが生産性向上につながります。目に見えない残業が減りますし喜ばれています。

また、自分がいるところは雨が降っていなくても現場は降っているということがあって今まではかなり現場の負担が大きかった。天気には勝てないですし、どうしようもありません。そんな「行かなきゃわからない不便」の解消・精神的な疲労の削減にもつながっています。

また、災害時の避難は初動が重要です。

前は町内放送だけだったのが、より早く状況を把握して危険度も数値で伝えることができる。人の命が一番大事ですからね。

IoTの可能性・様々な活用の仕方

SISC

河川の水害対策や建設業の現場の他にも活用の仕方がありますか?

森さん/松栄技建㈱

装置の雨量計・水位センサーによって得た情報を遠隔地へ送信、PCや携帯でデータを見ることができます。また、水位が指定値になったら通知を出すという設定で、遠隔地からでも河川の状況を把握できている。

さらに、雨量計や水位センサーだけでなく、温度計やCO2センサーなどもカスタム可能で、装置自体が外部の機器に対して制御をかけることができます。

モノに情報を持たせることが「IoT」ですから、いろいろな使い方ができますよね。

スマホで現場の状況を確認
スマホで現場の状況を確認
SISC

工場などでも使えそうですよね。

ビジネス化を見据えた実証試験

SISC

実証試験はどのように行ったのですか?

栗原さん/エイリツ電子産業㈱

実証試験の目的は

危険水位到達管理システム「Iシェア」での水位監視による早期対応・危険回避

これに伴い「Iシェア」を用いたビジネス化にあたり必要な事象を行う。

としました。

実稼働を想定して環境の違う県内3か所の河川で実証試験を行いました。設置場所によって危険水位が違うのでその見極めが大変でした。

また、河川の環境によってセンサーの種類を適したものに変えるなど、実証でやってみて良かったと思う点が多くあります。

環境の違う3か所で実証試験
環境の違う3か所で実証試験
SISC

新しい技術を作るということで実証試験をしたものの、頓挫してしまうこともよくあると聞きます。実証試験の目的に「ビジネス化」というワードがあるのがいいですね。

課題を改善し2号機が商品化

江里口さん/松栄技建㈱

じつは、実証試験での気づきや改善点を活かしてエイリツさんと共同で改良した「Iシェア2」の販売が決まっているんです。すでに熊本県の三郷町庁舎に4台導入予定・発注済みで、製造・販売・メンテナンスのJV会社を立ち上げ、全国的に展開していきます。

SISC

実証試験ではどういった課題や気づきがあったのですか?

池田さん/エイリツ電子産業㈱

様々な課題がありました。たとえば太陽光発電を採用していたんですが日照・バッテリーの問題があったり、設置場所によっては装置の運搬が大変なので軽量化の課題があったり。

先程も少し触れましたが、センサーの種類も設置場所によって電波式・超音波式など変える必要があり現場を見てカスタマイズしなければいけません。

電力の問題は通信のモードを切替えることができるようにして改善しました。水位を図るのにはほとんど電力を使わないのですが、通信の時に電力を消費します。普段の安全な水位の時は通信頻度を少なくしておいて、水位が上がったら通信頻度を上げるというような感じですね。これにより、大幅な改善が見られました。

改良・改善を重ね、商品化
改良・改善を重ね、商品化
SISC

ちゃんと改善を重ねていって、商材として今後につながっているのが素晴らしいと思います。「Iシェア2」の今後の活躍が楽しみですね。

本日はありがとうございました。

松栄技建株式会社

県内企業 佐賀市

弊社は平成11年創業以来、土木工事業の中でも特殊土木工事と呼ばれる新しく下水道管を設置する「推進工事」や、既存の老朽化した管を長寿命化させる「管更生工事」を主とした私たちの生活になくてはならない、ライフラインを支える仕事をしています。企業理念に『技術者たる前にまず人間たれ』を掲げ、土木建設業の技術と「誠実」「感謝」「歓喜」という3つの言葉を軸とした考え方を持つ技術者集団をつくることを目指し、日々技術力の向上に努めて参りました。地下での仕事が多いため皆さまのお目にかかる機会は少ないですが、お客様から熱い信頼を得られる企業を目指し今後も邁進してまいりますので、更なるご指導とご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。

事例紹介一覧へ戻る