事例紹介

社外からの視点を取り入れ 無理のない業務効率化を進める

提供:有限会社佐賀東部青果

農産物の販売や一次加工、農業用資材の販売などを行う「佐賀東部青果」。売上拡大を目指す中で業務効率化を進めるべくアクセラレータ事業に参加しました。その取り組みの中で、デジタル化以上に重要な視点に気付くようになったと言います。

総務・経理係長 松本 拓也 様

業務効率化はデジタル化する前にも 取り組めることが多くある


——はじめにアクセラレータ事業に参加したきっかけを教えてください。

 当社は玉ねぎやレンコン、レタス、アスパラ、イチゴといった農産物の販売や一次加工などを手掛けており、おかげ様で売上も増加傾向にあります。その一方で、事務作業は昔からあまり変わらず、特に棚卸しがある年度末など繁忙期には社員の時間外労働が増加するという経営課題がありました。売上目標百億円達成を実現するためには、従来通りの業務の進め方ではいずれ頭打ちになるだろうと、業務の分散やバックオフィス業務、在庫・資材管理業務の効率化が課題として挙がるようになったのです。
業務効率化に向けては、デジタル化やDXは有効な手段のひとつです。
DX推進について模索している中、取引のある銀行からアクセラレータ事業をご紹介いただいたのが、参加のきっかけになります。



——以前から業務効率化を検討されていたということですが、どんなことから効率化を進められたのですか。

 実は当初、デジタルツールを導入することで業務効率化が進むと漠然と考えていたのです。しかし、ツールの導入前にまずアクセラレータ事業者が社内の業務課題を洗い出してくれました。それを見ていくと、無駄のある業務や重複する業務があることが分かってきたのです。これによりデジタルツールを導入するより前にまだまだやることがあると気付けました。アクセラレータ事業者からも「ツールの導入を検討する前に、まずは業務改善から進めていきましょう」とアドバイスをいただきました。
 具体的には、特に課題を感じていた在庫管理に関して、入庫から出庫までの業務フローを作成したところ業務が複雑かつ属人化していることが見えてきました。そこで、他の業務フローについても可視化するために改善すべき業務について社内アンケートを実施。しかし、想定していたほどの回答を得られませんでした。皆、通常業務が忙しく、時間を割いて改善したとしても評価に繋がらないため、モチベーションが維持できなかったのでしょう。アンケート形式をやめてヒアリングにしたところ、他にも段ボール資材の在庫管理や送り状の作成にも手間がかかっていることが分かってきました。このように業務を整理した上で、はじめてツール導入が検討できると学びました。
 段ボール資材の在庫管理については、これまで人手で行っていた作業をバーコード管理する方法を検討しています。また、煩雑だった送り状の作成にはシステムを導入して、手作業でエクセルに入力するような手間を減らせるよう検討を進めています。
 業務の引継ぎが口頭で行われていることも多く、文書化できていませんでしたので、今後マニュアルの作成にも取り組んでいく予定です。


——支援を受けるメリットはどんな点にあると感じましたか。

 社員が業務の無駄を見つけたとしても、社内でそのことを指摘することがためらわれる場合もあります。アクセラレータ事業者による第三者視点からのアドバイスだからこそ、素直に受け止めやすい部分がありますね。実際に、客観的な立場だからこそ気づいていただけた点も多くあります。
 例えば、段ボールなどの資材管理業務は、私たちとしてはしっかりと正確な在庫数の管理をしなければいけないという認識で作業をしていますが、正確に把握するにはとても手間や時間がかかります。どこまで正確にやるべきかという線引きに関して、第三者の客観的な意見をいただけました。これは社員だけでは気づけなかったことだと思います。
 その一方で、我々が支援を十分に受けられる態勢が整っていなかったな、という反省点があります。業務フローの作成をとっても、現場が多忙のためスムーズに進行できたとは言い難かったですね。経営判断が伴うこともあり、DXや業務効率化は経営層とともに動く必要性があることを痛感しました。せっかく良い支援を受けられるので、支援期間中にできるだけ多くの効果を得たいものですが、それには参加側の準備も大切です。

バックオフィス業務の効率化を推進

DXは一朝一夕では終わらない。 現場を巻き込み着実に進めていく


——今後の取り組みについて教えてください。

 新年度には在庫のバーコード管理、送り状作成業務の効率化、作業マニュアルの作成などの課題をさらに細かく精査して、人件費とシステムの導入費・維持費のバランスを考慮しながら検討を進めていきたいと考えています。一部の業務で効率化が進んで「こんなに楽になった!」という声を社内で共有することができれば、他の業務でもデジタル化や効率化に抵抗感が少なくなるかもしれないと考えています。急に業務の進め方を変えてしまうと「これまでのやり方で何も問題なかったのに…」と前向きに考えられなくなってしまう方も出てくるかもしれません。現場を巻き込みつつ、負担のないように時間をかけて取り組んでいく予定です。支援期間が終了した後も、社内で業務改善のPDCAサイクルをまわしていきます。
 アクセラレータ事業の開始当初考えていたゴールとはかなりずれましたが、業務フローを作成し、課題を自分たちで洗い出して可視化できたことは大きな一歩でした。しかし本当の目標はフローを作成した、そのずっと先にあります。DXは一朝一夕にはいきませんが、アクセラレータ事業への参加は大きなきっかけになりました。「あのときアクセラレータ事業に参加してよかった」と思えるように、引き続き中長期的に少しずつ取り組んでいこうと思います 。


——本日はありがとうございました。



 (会社概要)
 会社名 :有限会社佐賀東部青果
 住所  :佐賀県杵島郡白石町大字福富下分2633-1
 業務内容:青果物移出及び一次加工販売・肥料・農業用資材販売




R5年度アクセラレータ事業受託会社:ロボフィス株式会社

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