事例紹介

デザイン思考で製造現場のムダ・ロスを発見 ~AITeCでの活動とソリューション事例 ~

提供:株式会社システック井上/国立研究開発法人 産業技術総合研究所 人工知能技術コンソーシアム(AITeC)

「DX」や「Society 5.0」等の取り組みが注目されていますが、途中で挫折されたお話や、期待した効果が出ないというお話をよく耳にします。そんな悩みを抱える人におすすめなのが、「デザイン思考」を使ったプロジェクト推進です。このコラムでは、デザイン思考を用いたアプローチについてご紹介させて頂きます。

DXで挫折されそうなお客様の声……

ものづくりのデジタル化を進める中で、こんな風に思ったことはありませんか?

「それって本当に効果があるの?」
「他社の事例を真似したけど、状況が違うのでうまくいかない」
「いいアイデアを思いついたのに、上司を説得できない」
「やってみたけど、思うような効果が出ない……」

DXを推進する担当者や経営者の多くが抱えるこのような悩み。
原因のひとつとして「本質的な課題が何であるか?」「価値とは何か?」についての検討が不足していることが挙げられます。

例えば、製造現場のムダやロスを把握して改善をはかることを目的として、設備の稼働状態の可視化を行うシステムの導入を検討されていたお客様において、よくよくお話を伺ってみると、設備の稼働率はオペレータに依存していることがわかったということがありました。つまり、設備の稼働の可視化をしたとしても、本質的な課題を解決することができず、無駄な投資に終わってしまう可能性があったということです。

デザイン思考を用いた価値の創造

では、「本質的な課題が何であるか?」「価値とは何か?」についての検討は具体的にどのように行えばよいのでしょうか。

そこで有効とされるのは「デザイン思考」を用いることです。デザイン思考とは「ユーザーも気づいていない本質的なニーズを見つけ、変革させるイノベーション思考」のことで、ユーザーと共感する所からはじめていく思考法です。

ここからは、デザイン思考を用いた価値創造のプロセスについてご紹介します。

1.共感:ユーザーを理解してユーザーがかかえる潜在的なニーズを掘り越します

ユーザーの話をしっかり聞いていると、ユーザーが当初希望していたことと違う部分の真のニーズが存在するということがわかったりします。
先程のお客様の事例のように、「設備の稼働率を上げたいから設備の稼働管理システムを検討している」という当初の希望に対して、「なぜ設備の稼働率?」をお客様へ問い続けると、潜在的な原因が浮き彫りとなりました。現場で管理している指標は設備の稼働率だったので、設備の稼働状態を知りたいというお話でしたが、本質的な課題は人だったのです。設備は空いているのに人のアサインがうまくいっていないという状態で、その結果として設備稼働率を下げてしまっていることが真の原因だったのです。つまり、このお客様の真のニーズは設備の稼働可視化ではなく、人のアサインの最適化だったのです。

2.問題定義:ニーズを明確化し、なぜそのニーズが必要なのかインサイト(顧客の意識)から問題点を明らかにします

ステップ1.共感 の延長線上でユーザーの真意を汲み取ることをしています。
先程の「設備の稼働率を上げたい」というニーズの裏側には、設備の稼働を低下させている原因を掴みたいという真意があります。これが、生産性向上のための価値へとつながります。

3.創造:可能性を最大限に拡げ、大量かつ多様なアイデアを探ります

しっかりと課題が見えたら、それを解決するためのアイデア出しをしていきます。
ツールやシステムで解決できるものもあれば、導入以前に解決できることもあるのであまりツールやシステム導入にとらわれないよう気を付けながらアイデア出しをしています。

ここまでで生まれたアイデアの価値や有用性を改めて評価するのに以下の2つの手法が役立ちます。

・データバリューフロー:アイデアに関わる登場人物を洗い出し、それぞれが持っているデータを情報として共有することで、どのような新しい価値が創造できるかを明確にする
・AI版ビジネスモデルキャンバス:アイデアに対して論理的に様々な視点で整理し、実現可能性を評価する

【お客様事例】デザイン思考で製造現場のムダ・ロスを発見

先程のお客様が当初想定されていた課題は「設備の稼働管理」で、設備の稼働率が上がれば生産性が上がるという認識だったのですが、生産性を上げるためには設備の稼働率だけでなく人の稼働も見るべきだという話に至りました。そこで「S-Smart稼働管理」に設備の稼働に加えて、オペレータの稼働状態を把握する機能を新たに追加し、設備と人の稼働を両方見ていくことになりました。

どうやって取り組む?産総研 人工知能技術コンソーシアム(AITeC)での活動

弊社(株式会社 システック井上)は、産総研 人工知能技術コンソーシアム(以下、AITeC)に参加しDX推進プロジェクト活動を行っています。AITeCでは、「ユーザー参加型+有機的連携によるAI技術の社会実装」をテーマに、他種多様な参加メンバーによる、オープンでイノベーティブな活動を行っています。また、ワーキンググループやプロジェクトでは、各企業の実ビジネスへの適用を前提とした実践的な実証事業や、データ活用の手法・技術などのソリューションおよび最新の技術動向を共有する勉強会なども行っており、参画企業間の有機的な連携をはかります。

今回ご紹介した「デザイン思考」をベースとしたアプローチにおけるデータバリューフロー、AI版ビジネスモデルキャンバスの活用についても、コンソーシアムの活動の中で、様々な議論を重ねて熟成させたものです。

現場における悩みを自社だけで抱え込まず、自由で開かれた環境で会話することにより、多くの気付きを得る事が出来ます。(勿論、機密事項については厳重に取り扱います)

一緒に、本当の課題をみつけませんか?

課題自体に気付き、価値の創造を行うことにより本質的な問題解決が可能となります。
そのためには、価値を創造するためのプロセスとアプローチ、そして仲間との会話による刺激が必要です。解決したい課題の発見および、価値の創造に向けて一緒に考えませんか?

株式会社 システック井上

国内企業 長崎県

「計測」「制御」「情報」のプロフェッショナルとしてお客様の夢を実現する”ことを使命とし、企業へ提供できる価値をお客様共に創造することが重要であると考えています。中小製造業の競争力強化の為、IoTとAI技術を用いた生産性向上や新製品サービス開発を支援し、新しい付加価値をお客様と共に創造しています。
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 人工知能技術コンソーシアム

国内企業 東京都

社会に求められるAI技術を目指して、製造分野、科学分野、生活分野を3軸とした実フィールドでの応用により深化・発展させ、次世代の産業・生活インフラを支えるAI技術の社会連携プラットフォームを形成していきます。

事例紹介一覧へ戻る