事例紹介

DX社内浸透のコツは「慣れ」と「みんなで」 ~社内教育の重要性~

提供:コトブキ製紙株式会社

コトブキ製紙株式会社は古紙100%原料(リサイクルパルプ)によるトイレットペーパー・ちり紙等の製造販売を1962年創立以来、60年以上営んでいます。今回はシステム部副長の花岡さんにお話を聞いてきました。

現場で感じたストレスを解消するべくシステム部へ

中島/SISC

本日はよろしくお願いします!花岡さんは現在システム部の副長を務めていらっしゃるとのことですが、どのようなお仕事をされていますか?

花岡さん/コトブキ製紙株式会社

パソコン・ITデバイスの管理と、社員向けのIT教育などを行っています。また、現場の人に使い方などを教えてはいるんですけども、それでもできない技術的な部分は私が代わりにやったりもします。

中島

花岡さんは勤められて長いんですか?

花岡さん

新卒で入社して8年になります。入社した当初は工場の現場の方で働いていましたが、5年くらい前の部署異動希望調査でこれまではなかった「システム部」という新しい部門ができていたのを発見して、自ら希望を出して今の部署に異動しました。ちょうどコロナ禍に入った頃で、社長がシステム部門の必要性を感じていたため新設された部署でした。

中島

コロナ禍初期の段階でその必要性を感じていらっしゃった社長の先見の明が素晴らしいですね。

花岡さんがもともとは現場にいらっしゃったというのも興味深いです。入社当時の会社の状況はどうでしたか?システム部に異動を希望されたということは当時、何かしら改善の余地を感じられていたのでしょうか?

花岡さん

当初感じていたのはもったいない、やりづらいということですね。DXという概念もまだなかったですし、報告などのやり取りは紙で行っていました。

弊社の工場は4組3交代制で昼勤、夕勤、夜勤があるのですが、たとえば夕勤だと深夜12時頃に終わって上司は帰宅している状態なので、報告したくてもできない。夜勤明けで朝すごく眠いけど報告しないといけない、ということもあり大変だし手間だなと感じていました。

部署異動調査が行われる少し前に工場でトラブルが発生して、書類の書き損じを何度も書き直すというようなことがありまして、部署異動希望調査でシステム部を見つけた時は渡りに船という感じでしたね。

中島

なるほど、常日頃から感じていた問題に加えてトラブルが発生したとあれば、余計にデジタルや業務改善の重要性を感じられたのでしょうね。

良い意味で慣れてもらえたから社内浸透できた

中島

面倒だとか、効率が悪いとか、同じように感じていた方は当時周囲にいらっしゃいましたか?

花岡さん

不満を持ってる人もいたんですけど、慣れてしまっている人がほとんどでした。今のやり方が当たり前で「回っているから別に変える必要ない」みたいに考える人は多いと思います。

中島

慣れって怖いですよね。例えあまり効率が良くないやり方で仕事をしていたとしても、慣れてしまえばある程度作業スピードが上がりますから。逆に新しいやり方に切り替えようとした時にはその新しいやり方を1から覚えるのが大変だし時間もかかるから、あまり歓迎されないのも頷けます。

そんな中で、どのようにシステムを社内浸透させていったのでしょうか?

花岡さん

最初の頃は結構抵抗もあって、直接「やめてくれ」と言われるなどいろいろ苦労もありましたけど、その部署で権限を持つ上司に「1回やってみて欲しい」とお願いして、トップダウンで指示してもらって半強制で触ってもらう。とにかく1度やってみてもらうことを意識していました。

結局のところ、「慣れてもらう」しかないですね。使ってもらって今はもう身近になってしまっているので、いい意味で慣れてもらえたのかなと思います。

中島

なるほど、時には強制力も働かせながら、まずはとにかく触ってもらうことで、新しいやり方に慣れてもらう。そのためには上司への根回しがすごく大事ですね。

1度試しに触ってみれば「意外と簡単にできるな」という気持ちになる人もいると思うので、そういう人を起点に伝播させていくと、新しいやり方をスタンダードにしやすいと思います。

タブレットを使用して記録している様子

花岡さん

私が入社してすぐの頃、社長の一声で全社員にタブレットが配布されたんですよね。当時の状況はあまり良く知らないんですけど、最初は用途が限られていました。

データもクラウドではなくて社内オンプレサーバーの中に入れる仕組みになっていましたし、結局現場の管理職が手入力でデータを記録していくというような大変な状況は変わらず……。長い期間もったいない状況が続いていたんですが、システム部が立ち上がってから、「ちょっとこのままじゃダメだよね」ということで、 本格的にipadを使ってどうやって社内を効率よく回していくのか、報告をうまく回していくのかを考えるようになりました。

現在はGoogleのサービスを使って、タブレットからデータを吸い上げるような形でデータ収集をしています。自社サーバーは予備サーバーのような使い方になっていますね。

中島

「何か動いてみないと進まない」という言葉は事例取材を重ねていてよく耳にします。タブレットの配布をきっかけに、最初は上手くいかなくても行動を起こすということを継続して行ってこられたんですね。そのうちみなさんが「変化する事」自体に慣れて、当たり前になってしまえばこっちのものですね。

1人ではなく、みんなでできるように

中島

現在、タブレットは情報の入力というところで使用していらっしゃるんですか?

花岡さん

そうですね、報告書の入力が主な用途です。最初の報告書入力フォームは私が作ったんですが、それを見て現場の人が「あ、こういう風に使っていいんだ」と気づいたようで、真似ていろいろ作成するようになったんです。私はサポートに入るぐらいで良くなったところがあるので、やっぱり最初は大事だなと感じます。

中島

真似して作る人が出てきたというのはすごいですね!よく「この人に頼めば作ってくれるから頼んじゃおう」みたいになりがちじゃないですか。最初に花岡さんが作ったときに、そうはならなかったんですか。

花岡さん

なりましたね(笑)ひどいと思われるかもしれないですけど、頼まれても「嫌です」と断ってました。

じつは社内教育の一環で、改善の計画を立てさせたり実際に触ってみさせたりと勉強会のようなことをやっています。最初の頃は本当に基本的なところから始めていきましたね。例えば、どういった情報があれば効率よく効果を出せるかという話やデータの型についてなど、「このくらいわかるだろう」という気持ちは捨てて、徹底的に基礎から教育していきました。

勉強会で話をする様子

中島

データの型は結構重要ですよね!皆さんの意識は変わってきましたか?

花岡さん

そうですね、現場にあるタブレットとかでポチポチ入力してもらうんですけど、決まった型で入力するということを徹底してもらえてます。若い人は自発的に動いてくれたりもするようになってきました。

中島

素晴らしい!目に見えて成果が出てきているんですね。

花岡さん

教育は固定の人にだけするのではなくて、今年はこの人、今年はこの人と年単位で変えて実施しています。1人だけできても、結局その人に仕事が集中してしまう。「君できるだろう、やっといて」という属人化や業務の偏りを避けるためにも、みんなができるようになった方がいいと考えています。

また、上司が部下に「やっといて」と指示をするにしても、それが本当にできるものなのかどうかっていうのは、少し関わって知識を持っていないとわからないと思うんです。

無茶な指示を飛ばすことにもなりかねないので、若い人だけでなく年配の方や上層の人にも理解していただけるよう少しずつ広めるようにはしています。

中島

おっしゃる通りですね。自ら勉強する人や改善行動を起こす人は、楽になりたいからやろうとしているはずなのに、あれもこれもやっといてと逆にどんどん仕事が舞い込んでくる状態だと嫌になりますよね(笑)

スクリーンを見つめる社員

終わりなき挑戦は山登りの如く

中島

これから目指す姿や目標についてお話を聞かせていただけますか?

花岡さん

最終的には、日報をそもそも入力しないで良い状態まで持っていくのが究極的なゴールになるとは思うんです。IoTツールを使って機械から自動で情報を収集して、データが可視化されて経営判断ができる状態になることですね。最初は簡単に設置できるセンサーからデータを集めていこうじゃないかということで進めています。報告作業が楽にできたら生産部門の残業時間も減るんじゃないかということで、残業時間を10パーセント減らすという目標を数字としてあげています。リアルタイム経営というところですね。

データを確認できるダッシュボード

中島

これからまたさらに、次のステップにもチャレンジされるというところですよね。

花岡さん

今ちょっと壁にぶち当たってますね。山を越えて落ち着いて、今また次の山に臨んでいるというような状態です。

中島

その山を登る道筋は見えてきていますか?まだ全然見えないような状態ですか?

花岡さん

一部は見えてます。

中島

それはよかった!道が見えない状態だと、メンタル的にも苦しくなってしまうので。いつもセンターにご相談に来られる推進担当者さんを見て、本当に大変なことにチャレンジされていらっしゃるなと頭が下がります……。

花岡さん

何をやればいいかが見えてくると少し楽になりますよね。

周囲の人も同じように、先が見えなくて「何やってるの?」というような疑問がでてくるのでしょうね。

中島

特にシステムなどはわかりづらい部分もあるでしょうからね。

悩みやストレスは一人で抱えず、周囲をぜひ頼っていただきたいです。当センターもいつでもご相談をお待ちしております。

まだまだ戦いは続くかと思いますが、頑張ってください!

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