DXがもたらす新たな価値提供~実践事例から学ぶスマート農業~
提供:アグリクリエイティブシード株式会社
高齢化、後継者不足が深刻な農業の現状を打開するべく、既成概念にとらわれない新しい形の農業を模索し続けるアグリ・クリエイティブ・シード株式会社。革新的な取り組みのアイデアはどのように湧いてくるのか、また、それをどのように形にしていっているのか、諸岡代表にお話を聞いてきました。
スマート農業への挑戦で新たな価値提供を実現
- 中島/SISC
御社はWEBサイトに「農業情報商社」であると記載していらっしゃいますね。どのような事業をされているのでしょうか?
- 諸岡さん/アグリクリエイティブシード㈱
当社は農業コンサルティングと農場運営を行っています。農業という業界はまだまだ職人気質や経験と勘の世界、という印象が強いでしょう?実際、農家さんの高齢化や後継者不足問題は深刻で、課題が山積みの業界なんです。そんな業界だからこそ、データ活用やデジタル技術活用の可能性はとても大きく、スマート農業を広く普及させたいと考えています。
- 中島
運営している農場で実際にスマート農業を確立して、それをコンサルティングで普及していくという形ですね。具体的にはどのようなことをされているのか教えていただけますか?
- 諸岡さん
農場では「環境制御装置」による環境管理や水やりの自動化などを行っています。
- 諸岡さん
また、観光農園としていちご狩りなどをやっているのですが、「吊り下げ式栽培棚」を導入したことにより、フラットで広い通路・スペースを確保することができ、いちご棚の下でイベントをするなど新しい体験価値の提供ができています。結婚式の前撮り会場として利用いただいたケースもありますよ。
- 中島
単純な効率化だけでなく新しい価値提供に繋がっていることが素晴らしいですね。
コンサルティング事業のほうはどうでしょうか?
- 諸岡さん
コンサルティング事業のほうで取り組んだのはマニュアルのデジタル化です。農業は職人の世界なので、技術を残していきたいと考えた時に、動画として見ていただけるものを作っておいた方が良いと思い、動画マニュアルを作成しました。
その動画マニュアルが、今新しく始めている事業、いちごのプロフェッショナルを育てる「いちご事業研修セミナー」でも大いに役立っています。
- 中島
過去の取り組みが新しい事業にもつながっているわけですね。
他にも、農業コンサルティング業務へのAIチャットボットの導入やロッカー型自動販売機による無人八百屋事業など現在絶賛チャレンジ中の取り組みもありますよね。こちらは別の取材で詳しくお話しいただきましたので気になる方はぜひ別記事をご覧ください!
事例記事「しっかりと収益を伸ばせる 持続的な農業を目指す」
挑戦を糧に、失敗から生まれたデジタルマニュアル
- 中島
いろいろな取り組みをされていますが、挑戦の数が多い分、中には失敗もあるのではないでしょうか。「これは失敗したな〜」ということがあれば教えてください。
- 諸岡さん
失敗はたくさんありますね。4年ほど前になりますが、遠く離れた場所にいるお客さんに対して遠隔指導ができないかと考え、スマートグラスの活用にチャレンジしました。
当時はスマートグラスでお客さんの作業している手元を撮影したり、PCから細かい指示をお客さんが装備しているスマートグラスで表示させるといった構想を考えていましたね。
ただ、これはやってみてわかったことですけど、正直想定していた用途のみであればスマホで十分でした(笑)
- 中島
スマートグラスの強みは「リアルタイムで共有できること」と「装着者の両手が空くこと」ですが、このケースではその強みが活かせる状況ではなかったということでしょうか。
- 諸岡さん
実はリアルタイムである必要性があまりなかったんです。農業って職人さんの世界で「俺の背中を見て覚えろ」みたいなところがあるじゃないですか。技術を引き継ぐには時間がかかるし、人も減っているから、技術を残していく必要があるよねっていうことがやりたいことの本質だったんですけど、それって結局のところ、動画で作成したデジタルマニュアルで十分だったんですよ。
- 中島
なるほど。その失敗がマニュアルのデジタル化に繋がっているんですね。むしろ動画マニュアルの方が何度も繰り返して見ることができるし、新しく始めた研修事業にも有効に活用できるものであったと。
- 諸岡さん
そうです。新事業の方はこれから力を入れていくのでぜひみなさんに知っていただきたい(笑)
- 中島
商魂たくましく、また失敗してもへこたれないトライ&エラーの精神も素晴らしいです(笑)
スマートグラスの導入はかっこよくて先進的なイメージですが、結局のところ「本質」を捉えてアクションを決めていくことが大事というわけですね。
デジタル技術の発展とアイデアの可能性
- 中島
お話しいただいた取り組み以外にも、ECサイトでの販売やSNS活用、Youtubeでの情報発信など様々なことに取り組んでおられますよね。
何度か当センターをご利用いただいてますが、「こんなことはできないか?」「こういうことやってみようと思うんだけど」と、毎回相談内容が違っていて、諸岡さんはすごくアイデアマンなんだろうなと感じています。
- 諸岡さん
語り切れていない取り組みは山ほどありますね。デジタル活用のアイデアに限らず、ビジネスのアイデアも毎日1つは思いついて、それを1個1個試していくんです。それが楽しくてたまらないんですよ(笑)
- 中島
全力で楽しんでおられるのは見ていてすごくわかります(笑)楽しみながらいろいろ空想することがアイデアに繋がっているんですかね。
- 諸岡さん
今自分がいろいろ考えている事は、聞く人からすると夢物語のように聞こえることもあるかもしれない。でも今のデジタル技術の発達スピードってものすごく早くて、5年前10年前には考えられなかったことが今実現している世の中ですよ。そんな夢物語みたいなことでも意外と近い将来実現していきそうだと思えてくるんですよね。
- 中島
想像を膨らませてアイデアを昇華させるためには、最新情報を常にキャッチして自分の中の常識をアップデートしていくことが重要かもしれませんね。
社員との信頼関係が生み出す「挑戦できる環境」
- 中島
思いついたアイデアはどのように実現させていくのでしょうか?「新しいことにチャレンジするぞ」と従業員のみなさんに伝えた時の反応はどんな感じですか?
- 諸岡さん
アイデアを思い付いたその次の日の朝には雑談的にみんなに話します。
うちはあまり上下関係がなくて、いろんな反応がありますよ。「またですか」とか「だめですよ、人足りないのにどうするんですか」とかはよく言われます(笑)急に言い出すことにはもうみんな慣れてきてますね。
- 中島
それでも、諸岡さんが「これはいける、やるぞ」と決めたことに対してはみなさんついてきてくださるんですね。
- 諸岡さん
社員を1人も置いていかず、合意形成していくようにしています。「絶対にやるから言うことを聞け」みたいな、意見を押し通すことはしないですね。1人でも納得しない人がいると、やはり「みんなでやろう、頑張ろう」という空気ができないんですよ。
説明して納得できるものだと「SNSでこういう風に発信したら良いんじゃないか」とか、みんなしっかり考えて意見を出してくれます。
社員から率直に意見を言ってもらえるのは財産だと思ってますよ。これまでも人間関係をずっと大切にしてきました。
- 中島
一般的には社長と話すとなると気構える人が多いと思いますが、従業員のみなさんから気軽に接してもらえるような関係性なんですね。諸岡さんの人柄が会社の雰囲気ににじみ出ているような気もします。諸岡さんは昔からそんな性格だったんですか?
- 諸岡さん
いやそれが不思議で、昔は全然違ったんですよ。学生時代は勉強だけしかしていなくて、人付き合いも最低限でした。農林水産省で統計を見る公務員の仕事をしていましたが、55歳で民間に転職。そこで初めて大きな成功を経験したんですが、その大きな要因は良いご縁があったり、困っている人が口コミを聞いてきてくださったり……。
- 中島
人間関係の大切さをそこで感じられたわけですね。先日ご挨拶した後にも私宛てにご丁寧にメールをくださってとても嬉しかったのを覚えています。
農業ってあんまり若い人はやりたがらないイメージだったんですが、従業員のみなさんはお若い方が多いですね。
- 諸岡さん
ほとんどセカンドキャリアで、いずれ自分で農業したいという人たちが集まってきていますね。夢を持って自分の人生を自分で作ろうとしているすごい人たちですよ。
- 中島
諸岡さんが社員のみなさんに対してリスペクトを持って接しているのも素敵ですね。
今日のお話の中には会社を成長させるDXのヒントがたくさんありました。
POINT!会社が成長していくために必要なこと
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新しい事業に繋がるアイデアが生まれること
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失敗がもたらす価値に気づくこと
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挑戦できる環境が整っていること
- 中島
アグリ・クリエイティブ・シード株式会社の次なる新事業がとても楽しみです!
本日はありがとうございました。