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佐賀玉屋がDX!どう変わった?社長に直撃インタビュー

提供:佐賀玉屋

佐賀で長年愛され続ける百貨店「佐賀玉屋」。創業1806年と国内でも有数の長い歴史を持つ老舗百貨店です。 そんな「佐賀玉屋」がDXで新たに生まれ変わったって知っていましたか? 「あれ?昨日お店の前を通ったけど、どの辺が変わったの?」 そう思う人も多いはず。変わったのは外観ではなく内部。長い歴史を持つ老舗百貨店が、デジタルの力でどのように変化したのでしょうか。佐賀玉屋の田中丸社長にお話を伺いました!

佐賀玉屋がDXに挑戦!その背景とは?

左)米倉営業企画部長、右)田中丸社長
左)米倉営業企画部長、右)田中丸社長
EDITORS SAGA編集部 牛島

本日はよろしくお願いします!田中丸社長、DXで佐賀玉屋が大きく変化されたと伺ったのですが、まずはDX実施の背景からお聞かせいただけますか。

田中丸社長

世の中様々な変化がある中で、百貨店の"これまでの商売のやり方"は明らかに通用しなくなっている状況です。遡ると平成3年をピークに売上の下降が続いており、これまでは客単価を上げるため外商の強化などの対策を講じて参りました。一方で地方百貨店はご来店いただくお客様を増やすことも重要ですが、実際は人口減によって商圏はしぼんでおり、さらに福岡といった都市部や、大型商業施設の進出によって競争相手は増えています。

競争に生き残るために佐賀玉屋も大きく生まれ変わらなければならない。

そうした流れを受けて4〜5年前からネット販売を開始し、スマホユーザーへのアプローチとしてアプリの開発、SNSでの情報発信、電子決済サービスの導入などにも取り組み始めました。

牛島

なるほど。今はスマホでポチッとするだけで物を購入できるので、実店舗に行く機会は減ってきているかもしれません。買い物のスタイルが変わってきていると言いますか。

田中丸社長

そうですよね。ECサイトで簡単に購入できますから。さらに、このコロナ禍で厳しい状況は一気に加速しました。特に百貨店の収益の柱であるアパレル業界のダメージは大きく、実店舗での取り扱いをやめてオンライン販売のみに切り替えた企業もあります。

作業効率を上げ、お客様と接する時間、回数を増やし、売り方自体を変える手段としてDXを進めました。県の補助事業を活用して、今年の6月までに様々な業務のDXを図ったところです。

牛島

具体的にはどのようなことをされたのでしょうか?

田中丸社長

それは実際の現場を見てもらったほうが分かりやすいかもしれません。営業企画部長の米倉がご案内しますよ。

DXポイント~売り場編~

佐賀玉屋の売り場入り口

まずは売り場から米倉営業企画部長にご案内いただきました。

米倉部長

まず、店内の入口付近と6Fの特別催事場に「AIカメラ」を設置しました。これで入店者の人数、年齢、性別、来店回数などの情報をデータ化し、マーケティングへの活用ができるようになっています。例えば、広報効果の測定などですね。父の日のチラシを打ったことで、ファミリー層が何%増えた等が分かるようになります。

AIカメラは計6台設置。
AIカメラは計6台設置。
米倉部長

こちらはデジタルサイネージ(電子看板)。催事情報やLINE公式アカウントの案内など、お客様にお届けしたい情報を流しています。これまではポスターなど「紙」で貼り出していたものをデジタル化したことで、各フロアへ一括で情報を発信でき、掲示物の貼り出し・取り外しの手間も減りました。

デジタルサイネージ
お客様に案内したい情報をタイムリーに流すことができる。
米倉部長

続いてレジのシステムをご案内しましょう。

これまで佐賀玉屋ではクレジット、電子マネーなど支払い方法ごとに決済端末が分かれていましたが、ひとつの端末で支払い処理ができるよう「マルチ決済端末」を導入しました。今まではお客様のカードをお預かりし、集合レジまで持って行っていましたが、この端末のおかげでお客様の目の前で決済することが可能となりました。

マルチ決済端末を操作するスタッフ
決済方法に合わせて端末を変える手間が省け、レジ業務がスムーズに。
米倉部長

あとは、売り場スタッフを中心に「タブレット」を120台配布しています。このタブレットでは在庫や仕入れ情報にアクセスすることができ、時には出先にいる外商スタッフとテレビ電話をつないで、売り場に並んでいる商品をお客様にお見せしたりしています。いわゆる「WEB接客」が可能となったわけです。

タブレットを操作するスタッフ
訪問先のお客様に、商品を映し出して見せることができる。

DXポイント~バックヤード編~

バックヤードも案内していただく

続いて、従業員の方しか入れないバックヤードを案内していただくことに。

米倉部長

これは売り場にも共通することですが、全館に「Wi-Fi」を設置し、このバックヤード内でもネットを使えるようにしました。

これで在庫管理も手書きではなくタブレットに入力するなど、どこでもネットを使って業務を行えるようになっています。

Wi-Fiは51機設置。
Wi-Fiは51機設置。
米倉部長

これは先ほど見てもらった「AIカメラ」から収集した情報の管理画面です。総合来訪者数、再来訪者数など、曜日や時間帯毎でも比較できます。

AIカメラが撮影した映像をリアルタイムで見ることもできる。
AIカメラが撮影した映像をリアルタイムで見ることもできる。
米倉部長

こちらは外商システム。お客様の購入履歴や、誕生日などの情報をデータ上で集約できるようになっています。仮に担当者が辞めてしまった場合でも引き継ぎがスムーズになり、業務の属人化を防ぐことにつながります。外商のお客様に喜んでもらえるような提案を行える基盤にもなります。

また、訪問ルートや訪問件数もこのシステムで管理できるので、各課長が業務内容を一括管理できるようになりました。

外商は現地から日報を入力して提出することも可能になった。
外商は現地から日報を入力して提出することも可能になった。

他にも、お客様の待ち時間を軽減するために、お中元・お歳暮の受付を行う「進物システム」を改良するなど、さまざまなDXに取り組まれていました。

常識にとらわれない!基幹システムのクラウド化

佐賀玉屋のガラスに映るロゴマーク

牛島

店内・バックヤードともに見学させていただきありがとうございました!導入後、どんな変化がありましたか?

米倉部長

各売り場に配布したタブレットに「LINE Works」を導入し、社員間のコミュニケーションに活用しています。会議の資料や売り場からの報告などもすべてタブレットを使い、ペーパーレス化を推進しています。

導入してからは現場から積極的に意見が出るようになったと感じますね。各部門からDX推進メンバーを募って、成功事例の共有や改善点などの話し合いも行っています。

田中丸社長

まずは社員で使い、それからお客様とつながることが本番です。

あくまでもお客様とは"アナログなつながり"が重要なんですよ。コミュニケーションが佐賀玉屋の強みで、そこを活かすためのデジタル化です。

コロナ禍で来店できない、そういう時にどれだけコミュニケーションツールでつながっているかが重要となります。お客様との信頼関係の構築が一番ですから。

牛島

アナログのためのデジタル化!なるほど。お客様との接点を切らさず、さらにその機会を増やしていくために様々なDXを進められたわけですね。

田中丸社長

あとは大きな変革としてあげるとすれば、「基幹システム」をクラウドサービスに切り替えたことですかね。販売・仕入れ・在庫管理など、ビジネスの基幹となるシステムのことですが、百貨店業界では各社ごとにオリジナルのシステムを発注してつくるというのが常識なんですよ。

米倉部長

システム開発には億単位の費用と長い時間がかかり、納品されたあとに改修となればさらに費用が発生します。今でも「システムは各社オリジナル」というのが業界の常識なのですが、既存のサービスをベースにできれば、莫大にかかっていたコストを抑えられます。

そこでクラウドサービスを使い、その上で各種データを連携できないかと検討し、実現の見通しが立ったので思い切ってクラウド化に踏み切りました。

田中丸社長

百貨店業界では珍しいことじゃないですかね、システムをオリジナルでつくってないって。既存のものを利用して、最低限カスタマイズしていけばいいじゃないかと。

システムのパッケージに合わせて会社の仕組みやルールを変える。この考えのもと、システムのクラウド化を決断しました。

DXとは"意識改革"。これからがスタート

牛島

ここまで実施された様々なDXのポイントについて教えていただきました。

田中丸社長、佐賀県内ではまだまだDXの浸透度が低い状況です。最後に、県内企業の方にメッセージやアドバイスをいただけますか。

田中丸社長

DXで何が変わるかというと、"意識"なんですね。単にデジタル化という意味だけではなく、本質は"意識改革"なんです。

新しいやり方を導入しようと思ったときに、一番ネックになるのは既成概念。今までの仕事のやり方、お客様との接し方、企業の常識。そうした既成概念を壊さないとDXの推進はできません。

例えば、お店でお会計をする際、タブレットのレジを見たことありませんか?百貨店は扱う商品が幅広く、品数がとても多いため「デパートはタブレットレジの導入なんてできない」というのが業界の常識です。タブレットでは従来のシステムに匹敵する機能がないと思われている。しかしそれは誰もやってないから分かっていないに過ぎません。

米倉部長

DXはこれからがスタートだと思っています。完成はないものなので、やりながらどんどん変えていけたらと。

田中丸社長

導入したシステムにどう魂を入れていくかだね。私たちが一番重要視しているのは、DXの前も後も同じ、「お客様とどうコミュニケーションをとるのか」ということです。デジタルを活用することでお客様と接する時間、回数を増やすことを目標としています。 DXは"目標設定と覚悟を持って取り組むこと"が大切ではないでしょうか。

まとめ

DXとは意識改革。既成概念を壊し、常識を変えるという田中丸社長の言葉がとても印象的でした。

アナログにお客様とつながるためのデジタル化。

佐賀玉屋では確固たる目的のもと、今日も改革が進んでいます。

執筆:EDITORS SAGA編集部 牛島

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