事例紹介

100年企業がDX推進で開く、未来への扉。

提供:株式会社ミゾタ

佐賀県では、県内企業に対するDXの取り組みの一環として、DXアクセラレータとして伴走することで、経営課題の整理やその解決への取組の企画立案を支援しており、最終的には、企業自らが自走して DX を進めることができるようになることを目指しています。 今回は、株式会社ミゾタの取り組みについて、手塚様にインタビューしました。

環境技術研究所 手塚様 

なぜDXに取り組んだのか

――まずは、ミゾタ様の企業概要をご紹介ください

私どもミゾタは1915年の創業以来、「水の総合エンジニアリング企業」として治水・利水事業を展開しています。河川に設置されている水門(ゲート)とポンプを一体化させた新しい治水・利水システム(ゲートポンプ)では日本のトップメーカーです。そのほか農業用揚水ポンプや雨水排水ポンプ、水門、除塵機、水処理設備機械等の設計・製造・施工を行っています。990年代後半からは環境問題への関心の高まりを背景に、私が現在所属している環境技術研究所をはじめ、全社的に自然エネルギーやバイオマスなどの環境関連分野の研究・開発にも取り組んでいます。

――本事業に取り組まれるにあたり、手塚さんが関わられている化粧品事業をDX推進の対象とされました。事業内容を教えてください。

環境関連分野の研究成果の一つ、ミゾタの「加圧熱水抽出技術」を用いて鹿角霊芝(ろっかくれいし)というキノコの一種から保湿効果があるβグルカンや色素成分メラニンの生成を抑える効果があるとされるトリテルペンなどの機能性成分の抽出に成功しました。
高付加価値な原料が化粧品の開発につながり、「604(ろくまるよん)」シリーズが誕生しました。604の名称は原料となる鹿角霊芝に由来しています。約15年前から販売を開始し、商品ラインナップは、保湿せっけん・保湿ローション・保湿クリームの基礎化粧品とジェルはみがきの4種類を604シリーズとして展開しています。
公共事業が主体の私どもミゾタの中でも、一般の方向けの商品を販売している事が、この化粧品事業の特色です。

――本事業でDX推進に取り組む以前に、化粧品事業に対して感じていた課題はありましたか?

発売当初は、社員の口コミと地元の一部の店舗で取り扱っていただいていましたが、広告宣伝など、これといった販促活動もおこなっておらず、ここ数年は売り上げも右肩下がりとなっていました。一方、発売から15年になりますが、根強いファンの方もおられ、開発されてはすぐ消えていく化粧品が多いなか、長年需要がありつづける商品の良さも私たち関係者は実感していました。ECサイトなどを通して、佐賀エリアだけでなく、もっと多くの方に商品を知ってもらうことで、これまで出会うことが出来なかった新たなお客様に604シリーズをお届けすることができるのでは‥‥と感じながらも、具体的なアクションまでは起こしていませんでした。

長年愛用されている方も多い 

――今回、本事業によりDXに取り組もうと思われた理由を教えてください。

604シリーズの販売実績を増やしていくために必要な販路拡大をはじめとする施策を私の部署内だけで行うには、専門的な知識はもちろん人員的にも不足していると感じていました。BtoCビジネスに関するノウハウや体制をこれから整備していくにあたり、外部企業の支援が必要と思っていました。特に、この事業はDX推進ということで、私どものように少人数で展開している事業にはデジタルやデータの活用の支援を受けられる点は大きな魅力でした。

――本事業によるDX推進を行うにあたり、どのようなことを期待されましたか?

まずは、604シリーズの商品特性に合った、ECサイトを含めた販路拡大戦略です。支援企業である福博印刷さんからも、「まずは増量化を目指しましょう」というお話を事業開始当初にいただいたこともあり、その点に期待しました。
また、在庫管理や受発注業務についても、今後の販売数量増加に対応できるように、業務内容の改善や業務プロセスの構築を検討できればと思いました。

DX打合せの様子
毎回DXに関するさまざまな検討をおこないました

具体的に取り組んだこと

――本事業で取り組んだことを教えてください。

初めに、担当者ごとに行っていたバックヤード業務内容の洗い出し(見える化)を行いました。具体的には、受注から支払いまでのワークフローや月末月初の締め業務内容について、現状の内容と課題、あるべき姿の見える化に取り組みました。バックヤードの事務作業は1人のスタッフが担当していて、私もある程度業務内容を理解していたつもりでしたが、この見える化によって、初めて知ることも多々あり、新たな気づきを得ることができました。初めに、担当者ごとに行っていたバックヤード業務内容の洗い出し(見える化)を行いました。具体的には、受注から支払いまでのワークフローや月末月初の締め業務内容について、現状の内容と課題、あるべき姿の見える化に取り組みました。バックヤードの事務作業は1人のスタッフが担当していて、私もある程度業務内容を理解していたつもりでしたが、この見える化によって、初めて知ることも多々あり、新たな気づきを得ることができました。

今後のDX施策の指針となるDXジャーニーマップを作成したことにより、関係者のなかでの考え方や、次に起こすべきアクションの共有ができるようになりました。

――今回、実際のDX施策にもチャレンジしていただきました。その内容を教えてください。

604シリーズの新しい販路として、ネット通販(EC)をスタートしました。具体的には、今回の支援企業である福博印刷さんが運営している「さがファン」というECポータルに「MIZOTA 604」として出店しました。具体的な取り組みとして、商品の認知度向上と、消費者ニーズの把握を目的に「プレゼントキャンペーン」を行いました。ネットショップを起ち上げるだけでは購買にはつながりませんし、かといっていきなり大きな広告投資をすることもできないので、スモールスタートの形で始めました。キャンペーン開始から1週間で約1,700件の応募をいただきました。初めてのWebメディアによる展開ですが、実際にご反応をいただき、DXがスタートしたという実感が沸いてきました。
今後は、プレゼント当選者の皆さんへのモニタリングや商品の購入促進、応募者の方へのアプローチなどを行います。DXジャーニーマップでも計画していますが、まずは顧客データの構築・活用によるCRM(※)展開の実施に向けての環境整備が当面の課題です。
※Customer Relationship Managementの略で、顧客との間に信頼関係を構築し、ファン化を促す取り組みのこと

――本事業に取り組んだ感想と今後の展望について最後にお聞かせください。

良かった点は、化粧品事業についての課題が明確になった点です。DXということで、デジタルの話ばかりになると想像していたのですが、さまざまな現状分析により、課題を見える化することができました。もし、自分たちだけでDXを進めていたら、ツール導入の話が中心になっていたと思います。解決すべき課題や取り組むべきテーマを丁寧に言語化したことで、自分たちに本当に必要なツールが何なのかという判断基準ができました。本事業を通じてDX推進のスタート地点に立つことができましたが、今後この取り組みを継続していくにあたり、どうやって自走していくかが課題であり、604シリーズの拡販を行いながら、模索しようと思っています。
今回のDX推進にあたり、私たち環境技術研究所のミッションを「ミゾタの未来への扉になる」としました。ミッション実現に向けて、これからもDXに取り組んでまいります。


(企業概要)
企業名:株式会社ミゾタ
住所:〒840-8686 佐賀市伊勢町15番1号
事業内容:ゲートポンプ、ポンプ、除塵機、水門、水門開閉機、下水道施設、トンネル防災設備、マイクロ水力発電、太陽光発電、風力発電、水質浄化、バイオマス

R5年度アクセラレータ事業受託会社:福博印刷株式会社

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